この記事では、樹脂について説明しています。
目次
この記事の要約
・樹脂は意味が広くなった。樹脂の特徴を持った、動物性や石油由来の生成物も樹脂と呼ぶようになった。特にプラ スチックは合成樹脂とほぼ同義である。
・合成樹脂には、熱で柔らかくなるものと熱で硬くなるものがある。構造により性質の違いが生まれている。
・熱で柔らかくなるものについては、柔らかくなる温度の違いで更に3つに区分される。
・プラスチックはモノマーの組み合わせや選び方で性質が変わってくる。
・プラスチックの加工の基本は、温めて、形を変えて、冷やして固定することである。
それでは本題に入って行きましょう。
樹脂とは何か?
樹脂は文字通りに読めば樹から採れる脂ということになりますが、実際には脂に類した 性質を持つ植物由来の物質を広くこう呼んでいます。
場合によっては、動物由来のものを含めることもあります。
天然樹脂と合成樹脂
樹脂の中でよく知られているものといえば、漆を挙げることができます。
引用:ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典 漆
漆はウルシ科の植物から採取した樹液を精製したもので、主として食器や家具などの塗料に使われています。
また、ゴムの木から採れるゴム、柿の実から絞り出した汁を発酵・熟成させた柿渋なども樹脂の仲間です。
柿渋はうちわなどに塗って耐久性を高めるのに今も使われています。
一方、動物由来の樹脂としては膠(にかわ)があります。
膠は動物の骨から抽出したコラーゲンを原料とした製品で、日本画の絵の具を定着させるための材料としておなじみ です。
これら動植物に由来する樹脂は、総称して天然樹脂と呼ばれています。
天然樹脂と反対の合成樹脂は石油を原料とする化学薬品から合成され、天然樹脂に似た特性を持つ物質ですが、天然樹脂に比べると安価で供給量が安定しているため、工業用の原材料としては現在、合成樹脂の方がシェアが高くなっています。
合成樹脂が発明されたのは19世紀半ばのアメリカで、20世紀初頭あたりから工業用材料としての利用が進みました。
日本においては20世紀中ごろの高度経済成長期において広く普及するようになりました。
合成樹脂の優れた点は、原料の配合や分子の大きさ等をコントロールすることによって、用途に応じたさまざまな特 性を持たせることができる点にあります。
硬度・粘度・耐熱性・耐光性など、多様なバリエーションを生み出すことが可能です。
その結果、合成樹脂には非常にたくさんの種類があります。
比較的よく知られているところでは、ポリエチレン・ポリウレタン・ポリ塩化ビニール・アクリルなどがあります。
調理器具でおなじみのテフロンも、フッ素を使った高耐熱性の合成樹脂です。
ポリエチレン製の食品用ラップフィルム
ポリウレタン製の スポンジ
プラスチックとは?
ここまで合成樹脂のお話でしたが、ここまで読むと、
「これらの製品は、つまりプラスチックなのではないか?」
とお気づきになる方もいるでしょう。
そう、合成樹脂とプラスチックは同じものです。
もともとプラスチックは「可塑性のあるもの」という意味の英語で、樹脂の性質を言い表す言葉なのです。
可塑性とは、力を加えると変形する性質のことをいいます。
したがって、同じ製品を時と場合に応じて樹脂と言ったりプラスチックと言ったりしているのです。
使い分けの基準は厳密に設けられてはいませんが、日本ではおおむね原材料の状態にあるものを樹脂、加工を施して 完成品になった状態のものをプラスチックと呼んでいます。
「プラスチック」という言葉についての補足
合成樹脂の最大の特徴は、まさにこの可塑性にあります。
木材や金属などに比べると成形しやすく、1つの型から同じものをたくさん作れるため、大量生産に向いています。
そのため、現代生活のさまざまな場面に用いられるようになっています。
身近なところでは食器や玩具、家電製品の筐体、包装材料。
工業などでは、建築資材や車両・船舶のボディなど、ありとあらゆるところに樹脂製品が使われています。
ここまでで合成樹脂とプラスチックが同じものであることがお分かりいただけたかと思います。
プラスチックはポリマーが絡み合ってできている
プラスチックの語源は「可塑性のあるもの」というものでした。
では、プラスチックの可塑性はどのように成り立っているのでしょうか?
この節では、代表的なプラスチックの構成要素について取り上げて見ていきます。
まずは、プラスチックを語る上で欠かせない、重合とモノマーとポリマーについて説明します。
上記の図では、エチレンが重合して、ポリマーになっている様子です。
絵の中でエチレンの状態では手を自分で組んでいます。
上の化学式では炭素が二重結合していることを表します。
エチレンは化学反応により、二重結合している部分を他の2つのエチレンと組み合わさるために使うことができます 。
連鎖的にエチレン同士が繋がることで、エチレンが2個3個...と多数のエチレンが結合することができます。
こうして結合が続くと、とても大きな質量の分子ができます。
これがポリマーです。
繰り返し結合してポリマーになることができる物質をモノマーと呼びます。
モノマーが結合していき、ポリマーを形成する反応を重合反応と呼びます。
画像引用: ウィキブックス
プラスチックの中では、ポリマーが複雑に絡まっています。
プラスチック内は、ポリマー規則正しく並んでいる結晶構造と形の定まっていない非晶構造に分かれ ます。
結晶部分は動きに制限があるため硬く、非晶部分は動きに制限がないため柔かいです。
材質により異なりますが、大部分が非晶構造でできています。
熱を加えると非晶構造部分が自由に動くようになり、可塑性が生まれます。
プラスチックの可塑性は非晶構造の部分によって実現されます。
結晶構造の部分が多ければ強度が高くなり、硬くて透明度が低いプラスチックになります。
非晶構造の部分が多ければ柔らかくて透明なプラスチックになります。


画像引用: 株式会社 ジャパックス様
2つともポリエチレン製だが左は結晶度が高く、右は結晶度が低い
レジ袋は結晶度が高く硬いため、シャカシャカ音がする
プラスチックは温めていくと、非晶部分が熱運動により動きやすくなり変形するようになります。
更に温めると、結晶部分がほぐれて液体の状態になります。
合成樹脂の分類
前節ではプラスチックの構造の一例をあげ、可塑性について触れました。
世の中には様々なプラスチックがあり、前節で見たプラスチックとは違う性質を持つものがあります。
この節では、プラスチックの分類を見ていきましょう。
プラスチックを分類するとき、大きく2つのパターンに分類されます。
画像引用: サントー試作モデル株式会社
1つ目は、分子レベルの構造に着目して、特徴を分類していくパターンです。
2つ目は、熱可塑性や熱硬化性などの、素材レベルの物理的・化学的な特徴で分類していくパターンです。
分子レベルの構造に着目したパターン
主な構造として、結晶性・非晶性、架橋構造、液晶性を挙げることができます。
特に、結晶性・非晶性プラスチックという用語はよく使われます。
架橋構造は、後述する熱硬化性樹脂であることが多く、液晶性もエンジニアリングプラスチックの機能の一つとして カウントされるため、結晶性・非晶性ほどには分類に用いられません。
1. 結晶性・非晶性
前節の代表的なプラスチックの構造では、プラスチックは結晶部分と非晶部分で構成さ れ、非晶部分が多く含まれるとお伝えしました。
さらに言えば、プラスチックは、結晶部分が含まれるプラスチックと一切含まれないプラスチックに分けることがで き、含まれる場合は結晶性プラスチック、含まれない場合は非晶性プラスチックと呼ばれます。
結晶性プラスチックでは、結晶部分の構成比率を結晶化度と呼び、特性を判断する一つの指標になります。
結晶化度が高ければ、強度が高くなり、硬く熱に強くて透明度が低いプラスチックになります。
結晶化度が低ければ、柔らかくて透明なプラスチックになります。
※ただし、透明度については混ぜものや粒子の大きさによって異なるため、あくまで一般的にはというところが注意点です。
同じ材質でも、製造方法によって結晶化度が変わります。
例えば、ペットボトルの飲み口については透明なものと白いものがあります。
ペットボトルは成型時に急冷することにより、結晶化を抑え透明性を出します。
飲み口については、加熱処理を加える加えないで透明性が変わります。
白いものについては、耐熱性を持たせるため、加熱処理を施し、結晶化度を高めています。
画像引用: 東静容器株式会社様
結晶性と非晶性のプラスチックでは、熱を加えた時の状態の変化が異なります。
結晶性プラスチックは、溶融する際、結晶部分を解くためにエネルギーが使われます。
そのため、融点がはっきりしています。
一方、非晶性プラスチックでは熱を加えるごとに徐々に柔らかくなり液体に近づいていくため、融点がはっきりわか りません。
また、結晶性プラスチックでは溶融した際、結晶部分を解くために使われたエネルギーが熱運動に変わるため、一気 に体積の増加を起こします。
急激な体積の増減は加工の際に欠陥を起こす要因になります。
2. 架橋構造
これまでは熱を加えると柔らかくなる性質のプラスチックの構造について説明しました。
直鎖状のポリマーが熱を加えることで動きやすくなるということでしたが、直鎖状ではないポリマーも存在します。
ポリマーより重量の軽い直鎖状のプレポリマー同士が化学反応により、部分部分が立体的に結合してポリマーが形成 されるとポリマーとしては立体の網状の構造になります。
部分部分が立体的に結合している構造を架橋構造といいます。
合成樹脂ではありませんが、架橋構造が日常的に利用されているものが身近にあります。
普段使う輪ゴムは、天然ゴムに架橋構造を持たせることで力を加えて変形した後も元に戻ろうとするため、弾性があります。
つまり、架橋構造は弾性を生みます。
立体的に結合している部分が多ければ、より硬く動きにくくなります。
立体的に結合している部分が少なければ、柔らかくなります。
架橋部分は強い結合であるため、熱や薬品に強く柔かくならない部分です。
形状記憶の機能を持ったプラスチックは架橋構造と熱をうまく利用したものになります。
架橋部分があって弾性があり、温めると柔かい状態になることができるプラスチックは形状記憶の性質を持ちます。
冷めた状態ではある一定の形状を取ろうとします。
この状態では力が加わると曲がります。
温めて柔かくなるとゴムに近づき、引っ張る力で元に戻れるようになるため、形を元に戻すことができます。
3. 液晶性
分子の構造が棒状のポリマーが溶融した際、分子が等方向に並び、液晶性を持つことがあります 。
この液晶性とは、固体のようにある程度規則的な並び方をするが、液体のように流動性を持つという中間的な状態の ことです。
画像引用: 日本女子大学様 「液晶とは」ページ
分子が等方向に並ぶことで特徴が生まれます。
強度、弾性、耐熱、溶融状態での流動性、振動吸収、気体を通さない性質など長所を持ちますが、等方向に並んでい るため、ある方向に対してのみ力を発揮します。
また、等方向で並ぼうとするため、角がある場合分子の密度が低くなり、角が脆くなる欠点があります。
等方向であることによる欠点は、ガラス材を混ぜたり金型に工夫を施すことで緩和します。
物性的な特徴による分類
合成樹脂は、大きく分けて熱を加えると柔らかくなる熱可塑性樹脂と反対 に硬くなる熱硬化性樹脂に分けられます。
熱可塑性樹脂はポリエチレンやポリエステル、アクリルなどがその代表格で、消耗品に使われることが多くなっています。
熱硬化性樹脂は耐久性を要求される製品に使われることが多く、メラミンやエポキシなどが知られて います。
熱可塑性樹脂は、既出の図のように直鎖状の分子で形成されています。
そのため、それぞれの分子については束縛する力が弱く、熱により分子の動きが活発になると動きやすくなるため、 加熱で軟化する性質を持ちます。
熱すれば柔かく、冷ませば硬くなり、一度硬くなっても再加熱で柔らかくなります。
熱可塑性の樹脂については、耐熱性、強度により、用途が幅広く変わります。
これらをさらに分類して、汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックに分けられます。
ポリマーの主鎖の部分にそれぞれ特徴がありプラスチックの強度に違いを生んでいます。
1. 汎用プラスチック
鎖状部分(主鎖)が炭素でできています。
安価に大量生産されていることが特徴で、プラスチック製品全体の約8割が汎用プラスチックです。
相場は200円/kg前後のものが多くなっています。
2. エンジニアリングプラスチック
耐熱性が100℃以上あり、強度が50MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上あるプラチックをエンジニアリング・プラスチックと呼びます。
略して「エンプラ」とも呼ばれます。
鎖状部分(主鎖)に炭素以外の元素を含んでいます。
汎用プラスチックは主鎖が炭素でできていましたが、炭素だけでできた場合、それぞれの炭素は回転運動をしやすく なります。
その場合、温度が上がった際に回転運動に耐え切れなくなり熱分解が起こります。
耐熱性が低いためです。
一方で、エンプラでは炭素以外の元素を含んでいるため、回転運動が起こりにくくなり、耐熱性が上がります。
相場は300〜400円/kg前後のものが多くなっています。
3. スーパーエンジニアリング・プラスチック
更に耐熱性が150℃以上あって長期間の使用に耐え、エンプラ の持つ特徴を一つ以上上回っているプラスチックをスーパーエンプラと呼びます。
略して「スーパーエンプラ」とも呼ばれます。
エンプラでは、主鎖に炭素以外の元素を含んで、汎用プラスチックより熱分解に強くなっていました。
スーパーエンプラでは主鎖にベンゼン環かフッ素を含みます。
ベンゼン環を含んだ場合は、炭素が同一平面上に六角形にならぶ部分があり、その付近での運動は起こりにくくなり ます。
ベンゼン環同士の距離がより近いほど、耐熱性の向上が期待できます。
また、フッ素を含んだ場合はフッ素と炭素の距離がとても近く結合が強いため、熱や化学的な安定性をもたらします 。
相場は800〜10,000円/kgと幅が広くなっています。
熱硬化性樹脂は、加熱前はプラスチックとしては完成していないモノマーとポリマーの中間でできている物質です。
加熱した直後は熱可塑性樹脂同様、柔らかくなります。
反応性混合物でできているため、加熱が進むと反応が始まります。
反応の際に隣同士のポリマーだけではなく、周りのポリマーと結合することで立体的な結合を作ります。
立体的な結合が生まれるため、動きづらい強い結合になり、硬くて熱や薬剤に強くなります。
一度結合が済むと、冷ましても結合が解けないため、柔らかくなりません。
実際には熱を高める手法でなくとも、反応を促進させる薬剤を用いることで硬くなるものもあります。
熱可塑性樹脂と違い、一度硬くなると特定の薬品を使わなければ柔らかくならないため、加工時に失敗すると再利用 ができないということが欠点になります。
ここからは、先ほどの分類にあわせて、代表的なプラスチックを見ていきましょう。
汎用プラスチックの代表例
汎用プラスチックには、5大汎用プラスチックと呼ばれるプラスチックがあります。
ところが、5大汎用プラスチックに選ばれるプラスチックは、必ずしも一致しないのが現状のため、5大汎用プラスチ ックに選ばれるプラスチックを見ていきましょう。
1. ポリエチレン(PE)
ラップなどの包装類、バケツやタンクなどの容器類に使われます。
寒さに強く、薬品に強い、電気を通さない、油に強い、吸水率が低いなどの特性があります。
一方で、火に弱い、接着性が悪く塗装が難しいなどの弱点があります。
ラップの材質には様々なものがありますが、ポリエチレンが使われているものはくっつきが悪い反面、安全性が高い と言われています。
酸素は通すので、野菜などを包むのがよいとされています。
ポリエチレンは製法によって、結晶化度に違いがでます。
結晶化度が低いものは、柔軟性が高く、もろくなりにくいため、ラップやフィルム、レジ袋、ビニール袋に使われま す。
その代わり、熱に弱くなります。
スーパーでビニール袋と呼ばれているものの多くは、結晶度の低いポリエチレンでできていることが多くなっていま す。
ビニール袋は元々ビニール製だったのですが、現在では名前だけが残りポリエチレン製のビニール袋という不思議な 状況が生まれました。
結晶化度が高いものは、より硬く熱に強く、不透明度が高くなります。
バケツや灯油タンク、袋などに使われます。


画像引用: ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典 ポリエチレン
2. ポリプロピレン(PP)
ポリプロピレンはポリエチレンと構成されている元素が同じで、吸水率が低い、 電気を通さない、軽量、安全性が高い、薬品に強い、燃えやすい、塗装が難しいなど似た特徴がある一方で、紫外線の影響を受け、日常使いで劣化してしまう欠点があります。
硬く、汎用プラスチックの中では一番耐熱性が高いなどの特徴があります。


画像引用: 椙山女学園大学 生活科学部 管理栄養学科様 ポリプロピレンページ
画像引用: タキロンポリマー株式会社様
そのため、ポリエチレン同様、バケツやCDケース等似た用途でも使われますが、硬さや耐熱性のために繊維として衣 料品やテント、工業用品など利用用途が変わっています。
柔かさが求められる製品への広がりはポリエチレンが広く、硬さや耐熱性が求められる用途についての広がりはポリ プロピレンの方が広いと言えるでしょう。
ちなみに人工芝にもポリプロピレンは使われていますが、前述のポリエチレンの方が柔らかく長い芝で体への負担が 小さいということでポリエチレンが採用されるケースが増えてきています。
3. ポリスチレン(PS)
ポリスチレンは非晶質です。
透明性が高く、外で使用しても材質に変化が起こりにくい、電気を通しにくい、加工がしやすいなどの特徴がありま す。
単独では耐熱性が弱い、衝撃に弱い、薬品に弱い、耐油性も弱いなど欠点があります。
食品系の容器、発泡スチロールにもポリスチレンが使われています。
高い透明度や日常使いでの変化の少なさを活かし、CDケースや、自動車のランプカバーにも使われています。
ポリスチレンは、単独での欠点をカバーするため、他の材料と配合されて使われることも多いです。
発泡スチロールはポリスチレンからできています。
発泡スチロールには空気が大量に含まれるため、乱反射で白く見え軽いのが特徴です。
軽量で断熱性、緩衝性、耐水性に優れるため、至るところで使われます。
カップラーメンの容器にも使われます。
この際は、熱に弱い点をカバーするため、表面に別の素材のシートを張ることで、衝撃や熱に強くしています。
4. ポリ塩化ビニル(PVC)
ポリ塩化ビニルは塩素をエチレンに付加させることでできる製品で、石油の使用割合が約4割ということで石油の使用量は、他のプラスチックに比べてとても少ないプラスチックです。
ポリ塩化ビニル自体は硬いのですが、加熱時に可塑剤と呼ばれる添加剤を加えることで冷めても柔かい材質軟質ポリ塩化ビニルになります。
ポリ塩化ビニルは常温では硬いのですが、5度以下では急激に脆くなる、耐熱性が弱いなど問題があります。
可塑剤により、耐熱性、耐油性、柔かさ、表面の滑らかさ等がコントロールできます。
可塑剤を使うと、接触しているプラスチックに可塑剤が滲み出す恐れがありますが、種類を選ぶことで滲みだしを防 ぐことができます。
他のポリマーと混ぜて使うことで欠点を補い、利点を付け加えることができます。
このように加工しやすく、特徴をコントロールできるところから様々な製品に利用されています。
塩素による安全性や環境の配慮で、規制がたくさん設けられていますが、物性のコントロールにより、マイナス面を カバーすることで食品容器・血液用バッグを始めとした医療機器・玩具に用いられます。
また、耐久性・耐水性が強く、表面が滑らかで汚れが付着しにくい点を活かし、水道管や建築材とし て使われます。
同様の理由でかばんのコーティングにも使われます。
更にポリ塩化ビニルを使用することで表面に凸凹を付けるエンボス加工が行いやすくなります。


画像引用: 株式会社西原化成様
画像引用: ダティエンタ ープライズ様
5. ABS樹脂
5大汎用プラスチックに含まれないことがある樹脂ですが、汎用性の高さがあり、工業に欠かせ ない素材になっているため、5大汎用プラスチックの一つとして数えられることがあります。
これまでの材質と違い、通常は混ざり合わない材質を混ぜる技術であるポリマーアロイ技術で製造されます。
ポリスチレンの欠点を補うために、アクリロニトリル、ブタジエンがスチレンに加えられ、頭文字からABS樹脂と呼ばれます。
アクリロニトリルは、ポリスチレンの変形しやすさや耐油性を補います。
ABS樹脂はAS樹脂と呼ばれるアクリロニトリル、スチレンでできた樹脂の中にブタジエンが微細に不均一に混じっているような構造です。
ブタジエンは合成ゴムとして使われている素材です。
ブタジエンゴムは反発性や耐摩耗性が優れています。
ブタジエンが微細に混じっていることにより、熱可塑性を保ちながら衝撃に強い性質を持つと言われています。
また、ポリスチレン同様光沢を持ち、見た目の美しさがあります。
ただし、ポリスチレンほど日光による変化が強くないため、長時間日に当たると劣化します。
ABS樹脂に更に材料を加え、特徴をコントロールした樹脂が開発されています。
機械的強度のバランス、塗装や加工のしやすさを持ちます。
メッキを施す素材としても利用できるため、ありとあらゆる工業製品に使われます。
パソコンやプリンター、洗濯機、自動車、おもちゃ、水廻り製品など至るところに使われます。
