世界的にも珍しい東京都大田区のものづくり

製造業の基礎

世界的にも珍しい東京都大田区のものづくり

東京23区の中で もっとも広い区(60.83平方キロメートル) である大田区。
区域は東西に広がり、西側には高級住宅地もあります。
しかし、やはり大田区といえば、多くの町工場がひしめく ものづくりの街 としての一面でしょう。
京浜工業地帯の一画を成す区東部を中心に、大田区には約3,500の工場があるそうです。

日本を代表するものづくりの技術を持つ中小企業が集まった大田区。
その特徴を紹介します。

大田区のものづくり産業の特徴

大田区が「ものづくりの街」と自らを呼ぶようになった背景には、主に金属を素材とした「削る」「磨く」「形成する」「メッキする」といった、ものづくりの基礎となる素材加工を、高度な技術力で専門に請け負っている機械金属加工の工場が、数多く集積しているからです。

大田区のHPに掲載されている「平成26年度大田区ものづくり産業等実態調査報告書」によると、大田区のものづくり産業の特徴が、以下のように記載されています。

業種分類を集約してみると、「一般機械」と「金属製品」が多く、両者を合計すると 55.5%
を占めており、「鉄鋼・非鉄金属」「電気機械」「輸送用機械」「プラスチック製品」を含む機械・金属加工系の業種が 8 割超に達する。

資本金については、「5 百万円以下」の割合が最も高く 33.1%となっている。
次いで、「5百万円超~1 千万円以下(24.2%)」「1 千万円超~5 千万円以下(19.7%)」となっている。

従業者規模を事業所ベース及び企業ベースでみると、従業者数全体については、「3 人以下」が半数程度を占めており、これに「4~9 人」を加えた「9 人以下」のシェアは 3/4 前後に達し、特に、事業所ベースでは 8 割弱となる。

以上 大田区ものづくり産業の実態把握 より抜粋

このように、大田区には機械金属加工を中心として、小さな町工場が数多く存在しています。
さらに特徴的なのが、それら工場が特定の製品の生産技術ではなく、多種多様な製品を生み出す基礎となる 基盤技術 に特化した企業が集積していることが、大田区の独自性を生み出していると言われます。

その1つが、近隣工場が協力しあえば製品が完成するという、いわゆる 仲間まわし と呼ばれる独特な連携体制です。
大田区の製造業者が、結果として大手の系列化、下請け化に頼ることなく独自の発展を遂げた要因の1つと言われます。

こうした強みは交通網の発達やインターネット環境の進化によって、その意味合いが変わってきてはいるものの、「多品種」「小ロット生産」「短納期対応」を可能としている点は、他地域や他の国が真似することのできない大きな特長と言えます。

基盤技術に優れた大田区の企業を紹介

基盤技術とは、「切削」、「研削」、「板金」、「プレス」、「鋳造」、「鍍金(めっき)」などの、工業製品を作る際に基本となる加工技術のこと。
ここからは、これらの技術の概要を説明しながら、それを得意とする大田区の企業を紹介していきましょう。

表面を削って所定の大きさにする「切削加工」

切削加工とは、材料を専用の工作機械や工具等を用いて表面を削り取り、所定の大きさや形状に加工する技術のことを言います。
大きく分けて丸物の加工と角物の加工に分類され、主に旋盤等を使用するのが丸物工作物の加工で、角物工作物は穴をあけたりフライス盤を用いて溝を作ったり複雑な曲面を作ったりします。

アートスキル

大田区にある金属や樹脂の切削加工を得意とする会社。
3D CAD/CAMからマシニングセンターを使用し、金属、樹脂の切削加工を主に行っています。
特殊な微細加工の技術を生かし、一般的には非常に困難と言われる形状への切削加工に挑戦し、実現しています。

加工物の表面を滑らかにする「研削加工」

研削加工は、研削用の砥石や研磨紙(布)などを使用して、加工物の表面を仕上げる作業のことです。
つまり、切削加工した加工物の表面を滑らかにするのが研削加工というわけです。
専用の工作機械などにセットされた研磨用の砥石を使い、金属の表面を1000分の1単位で削り取るような高精度な加工も、この研削加工の工場が得意とする技術と言えます。

加藤研磨製作所

研削加工技術に優れた大田区の技術者集団。
多様かつ高精細な研削加工技術を有し、高精度を要求される工作機械部品、試作部品、金型部品を製造しています。
研削加工だけでく、切削、熱処理、放電加工等、素材から完成品まで社内で一貫生産できる体制も有します。

金属板から様々な製品を作り出す「板金加工」

板金加工とは、工具を使用して金属板に力を加えて変形させ、あるいは切断するなどして製品を作る技術です。
プレス金型を用いて板の形状を様々な形に変化させたり、切断、くりぬき、パンチなどを行います。

関連記事:「板金加工とは何か?」

株式会社東開製作所

大田区で半世紀以上の歴史と技術力を持つ、精密板金プレス加工会社です。
半導体関連、自動車部品、 医療機器、鉄道設備部品、住宅設備、インテリア雑貨など、多岐にわたる品物を設計、製作しており、図面がなくても対応できる確かな技術力、提案力を誇ります。

金型の間に素材をはさんで成型する「プレス加工」

対となった金型の間に素材をはさみ、工具によって強い力を加えることで、素材を工具の形に成形(塑性加工)する。
これがプレス加工です。
このとき加圧する機械のことをプレス機械と呼びます。

岐阜精器工業株式会社

プレス加工でもっとも難しいとされる絞り加工(薄板からさまざまな形状の底付容器を作る加工法)を得意とする大田区の企業です。
円筒絞り、 角絞り、異形絞り、深絞り加工など幅広い加工を自社設計金型で対応しています。

「鋳造」は古くから伝わる大量生産に適した製造技術

鉄やアルミ、銅などの金属を高温で熱して液体にし、型に流し込んで目的の形を作る技術が鋳造です。
鋳造に使用する型を鋳型、鋳造でできた製品を鋳物と呼びます。
砂を型に利用した砂型鋳造は、古くから伝わる製造技術の1つです。

東京高圧工業株式会社

溶融金属(溶湯)に圧力を加えて金型内に注入する鋳造法、「ダイカスト」を得意とする大田区の企業です。
アルミ合金、亜鉛合金、マグネ合金、銅合金、鉛、スズなどが材料として用いられ、光学部品や自動車部品をはじめ、多種多様な工業製品、装飾部品を製造しています。

材料の表面に金属の薄膜をかぶせる「鍍金」

めっき、あるいは鍍金(ときん)とも言われるこの技術は、材料の表面に金属の薄膜を被覆することで、素材の腐食(酸化)を防いだり、高級感や質感を与えたりします。
一般には装飾品によく使用されていますが、その技術の進化によって、今では様々な製品に利用されています。

関連記事:めっきとは何か?

株式会社NAKARAI

大田区にあるメッキ加工・塗装に定評ある会社です。
鏡面仕上げを中心とした装飾性の高いメッキ処理を得意としており、「史上“最鏡”はNAKARAIの登録商標です!」とあるように、その技術力と品質には相当な自信を持っています。

まとめ

ここに紹介した以外にも、大田区には優れた基盤技術を受け継ぎ、さらに進化・発展させている工場が多数あります。
それらの企業群が様々な形で連携することによって、自社だけでは応じきれない多様なニーズにも応えています。
世界的にも珍しい大田区のものづくりは、こうした高技術、高度技能の専門集団によって支えられているのです。

Fabit編集部

Fabit編集部

Fabitは、「日本一わかりやすい製造業紹介メディア」です。
当メディアは製造業にスポットライトを当てて、今まで交わることのなかった工場と工場、工場とヒトが交わることにより、新しいイノベーションの芽が生まれることを目指しています。

Twitter
Facebook
Instagram