ダイカストとは?

製造業の基礎

ダイカストとは?

トップ画像引用:ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典 ダイカスト

ダイカスト(die casting)とは、鋳造(casting)の方法の一つです。
ダイ(die)は金型の意味でカス卜(casting)が鋳造の意味を持ちます。

ダイカストの説明に入る前に鋳造について、説明します。

鋳造とは

鋳造とは、製作物と同じ形の空洞を持つ型に、溶かした金属を流し込み冷やして固める加工方法のことをいいます。

金属の成形方法には、固体状態の金属に熱や圧力を加えて変形させるもの、不要な部分を削り取っていくもの、粉末を押し固めて熱で結合させるもの、など鋳造以外にもあります。
鋳造の特徴は、複雑で大型な形状でも製造でき、大量にかつコストを低く製造できることにあります。
そのため、加工方法として多く利用されています。

ただし、溶融金属を使っていることで、冷却時に熱収縮や形状の歪みが問題になる他、内部欠陥が生まれやすく、加工前に発見しづらいため、不良品が一定数出てしまいます。
欠点改善のための鋳造法が生み出され、対策が行われています。

鋳造には、他にも砂型鋳造加圧鋳造、今回取り上げるダイカスト鋳造など、様々な加工方法に分かれます。

今回はその鋳造の中でもダイカスト鋳造法について取り上げます。

ダイカストの特徴として、他の鋳造法に比較して大量生産に向き、大量生産した場合は安価になる、寸法精度がよくなる、製品表面の粒子が細かく少ない手間で表面を美しくできる利点があります。
下記で説明するとおり、ダイカストで使われるアルミニウム合金が軽いため、軽量化を図る自動車で積極的に用いられます。
ダイカスト製品の8割以上が自動車用途で使われていると言われています。

ダイカストの概要

ダイカストとは金型の中に溶かした金属を流し込み、冷やし固めて成型する鋳造方法の1つです。
ダイカストは1905年(明治38年)に開発され、特殊な合金で出来た金型の中に素材を流し込み、専用のマシンで高い圧力を瞬時にかけて作り出します。

鋳造には石膏鋳造や砂型鋳造、鍛造鋳物などの方法があり、例えば大仏の製造など古代から人々に使われてきましたが、従来の鋳造方法では製品ごとに金型を壊す必要がありました。
しかしダイカストでは金型をいちいち壊さずに繰り返し使う事が出来るため、その他の鋳造よりも短時間で大量に生産することが可能です。

ダイカストは鋳造方法の中でも特に高い生産性と精密性が特徴です。
その高い寸法精度から、薄くて複雑な形状の製品でも効率的に生産することが出来ます。
出来上がった製品は表面のデコボコが少ないため、メッキや塗装など表面処理も容易です。
また製品の強度も高く、機械加工も少なく済むという優れた特徴を兼ね備えています。

ダイカストが開発されたのは近代になってからですが、精密な寸法・正確な仕上がり・美しい表面・優れた生産性から、自動車産業を中心に製造業の発展に大きく貢献してきました。

自動車部品ダイカスト1
自動車部品ダイカスト2

画像引用: 株式会社フジイ金型様

ダイカスト製法には、ダイカストマシンという専用の機械が使用されます。
これに金型を取り付け、溶湯といわれる溶かした合金を高圧で流し込むことで成型されるのです。
その際、溶湯は金型の隙間から飛び出ようとしてくるので、それ以上の大きな圧力をかけていく必要があります。

この金型を締め付ける力が強いマシンほど、より大きな製品を作り出すことが可能です。
素材となる合金には溶かしやすく、固まった時に欠陥が出にくい特性が必要です。
そのため、素材には主にアルミニウムマグネシウムなどが選ばれます。
また、ダイカスト用の金型は繰り返しの使用に耐える必要があるので、特殊な耐熱鋼が用いられます。

ダイカストマシン
画像引用: 東洋機械金属株式会社様

現在主流になっているダイカストマシンは主にホットチャンバーコールドチャンバーの2つに分けられ、それぞれ得意な製品が異なります。
ホットチャンバーは、金属を出す射出部が溶湯を溜め込む溶湯炉の中にあるタイプです。
鋳造サイクルが早く、空気の巻き込みがないので不良品が出来にくいのが特徴です。
鋳造圧力が低いので金型の負担が少ない効果もあります。
コールドチャンバーは、射出部と溶湯炉が別々に分かれているタイプで、手込めか機械で流し入れて使用します。
鋳造サイクルは少し長くなりますが、汎用性は高く、より高い圧力をかけて大きな製品を製造することも可能です。

溶湯炉
画像引用: 株式会社サンエイテック様

ダイカストによる鋳造は量産性や精密性に優位である反面、高速で溶湯を金型に注入しなければいけないという工程上、金型の中に空気を巻き込んでしまったり金型の隅部へ溶湯が流れなかったりと、たびたび不良品が発生してしまいました。
しかし、近年は技術向上によって真空ダイカスト法・局部加圧法・酸素置換法など特殊ダイカスト法が開発され、それらの欠点も改善されてきています。

ダイカストは生み出されてから今日まで多くの分野で活用されてきました。
最近では合金素材も様々なものが使われています。
特にアルミニウムダイカストは、低温に強い、熱や電気を通しやすい、軽量、加工しやすいなどの特徴があり、電子部品や医療器部品などにも使われています。
またリサイクル性に優れているため、省エネルギー・省資源など環境保全に役立っているのです。
著しい金型技術の発達、合金素材の改良により建築材料、産業機械、家電製品、日用品など、身近な雑貨から最先端機器にいたるまで、用途をさらに拡大しています。

全体の流れが分かったところで、ダイカストの3要素と言われているダイカストマシン金型合金材料について深く見ていきましょう。

ダイカス卜の工程

言葉ではダイカストの工程についてイメージしづらいのでまずは動画をご覧ください。
 

動画:YouTube ダイカスト東京

下記は、動画からの引用画像です。

順を追って確認しましょう。

ダイカストマシンの一部の断面図です。
ダイカストマシンには可動型と固定型という金型が取り付けられています。
ダイカストマシンの大まかな流れは、①型を締めて溶湯をシリンダーに流し込む、②シリンダーに高圧力をかけて、型内に溶けた金属を流し込む、③型を冷却し、金属を固定した後製品部分を剥がす
です。
前後に、①〜③の流れを潤滑に行えるよう別の工程が入ります。


ダイカスト工程1

自動スプレーで型の表面に離型剤を塗布しています。

離型剤の役割は溶湯と金型が直接に接触することを妨げて、焼付きを防ぐことと金型から製品を離すときに抵抗を減らすことです。
離型剤にも種類があり、潤滑性・耐熱性・断熱性・保温性など、使われる素材や用途によって使い分けがされます。


ダイカスト工程2

圧力を掛けて、型を閉じます。
このとき型から金属の液が漏れないよう、高い圧力を掛けます。

ダイカスト工程3

溶湯を流し込みます。

溶湯を流しこんだ後、高圧力用のピストンであるプランジャーで高圧力で押しこむことで一気に金型内に金属を流し込みます。

ダイカスト工程4
ダイカスト工程5

流し込んだ後、冷やした後に製品を取り出します。
製品を取り出した後は、最初の離型剤スプレーに戻ります。


ダイカスト工程6

ダイカスト工程7

ダイカストマシンと金型

ダイカストでは、ダイカストマシンを使うことで金型に溶湯を流し込んでいました。
それでは、ダイカストマシンと金型について、確認してきましょう。

金型

一口に金型といっても、成型品の形が掘ってあるだけではありません。
金型には下記の機能を実現するための構造が求められます。

・成型品を離す
・冷却する
・溶湯を流し込んで成型する
・空気や不純物を逃がす
・ダイカストマシンに取り付ける

1. 成型品を離す

できた成型品を離す必要があります。 離型剤は塗られているとはいえ、成型品がポロリと取れる訳ではありません。 そこで、成型品を取り出すために、押出ピン(エジェクタピン)や押出板(エジェクタプレート)、リターンピンがついています。 押出板には押出ピン、リターンピンがセットされています。 固定型と可動型が離れた後、可動型には成型品がついています。 押出板が前進することで、押出板にセットされた押出ピンが成型品を押し出して成型品を外します。 固定型と可動型が次の成型品を作るため、くっつくわけですが、その際に、リターンピンが固定板からの反発力で押出板を元の位置に戻します。

2. 冷却する

金型に溶湯が流し込まれた後、金型を冷やすことで金属を固めます。 そのため、金型には冷却水を流すための機構があります。 冷却管や冷却水穴が設けられています。 ただし、ただ冷やせばよい訳ではありません。 ただ冷やした場合、金属の固まり具合にムラができます。 液体の金属は冷やすと縮む力が発生します。 そのため、冷却機構の設計を行わないと部分的に集中して力が加わり、成型不良や金型が壊れる原因になります。

3. 溶湯を流し込んで成型する

金型には溶湯が流し込まれて、成型するわけですが、ここでもパーツが分かれています。 主な構成要素はスプルーブッシュ(鋳込口ブッシュ、スプールブッシュ)、ランナー(湯道)、ゲート(湯口)です。 高圧力用のピストンであるプランジャーから溶湯が高圧力で射出されるわけですが、ダイカストマシンから金型に入ってくる通り道をスプルーブッシュと呼びます。 溶湯は固定型に流し込まれるため、スプルーブッシュは固定型についています。 ランナーはスプルーブッシュから流れてきた溶湯から金型内の製品部への通り道です。 スプルーコア(分流子)と呼ばれる部分を通じて、スプルーブッシュからランナーに溶湯が流れこむようになっています。 スプルーブッシュやスプルーコアは溶湯なり、プランジャーとの接触なりで摩耗が激しい部分になり、交換が可能なように別部品として構成されています。 ランナーは溶湯の流れをコントロールする一方で、冷却時にランナー内の金属も固化されるため、製品とは関係ない金属部分ができます。 ランナーから製品部の境目部分がゲートになります。 この部分は、流れこむ速度を適切にすることと、金属が固化される際に溶湯が製品部に行き渡るように圧力が長い時間保たれることが求められます。 ランナー、ゲートについては、金属の無駄をなくさないために、ランナーが不要なものや形状が様々で利点が異なるため、設計の際の一つのポイントになります。

4. 空気や不純物を逃がす

溶湯内、金型内には金属の酸化物や離型剤の残りが存在します。
また、高圧力で注入される際に空気を金型外に押し出す必要があります。

そのため、それぞれに対して、金型に機構が設けられます。

酸化物や残りカスを排出する部分をオーバーフローゲート(湯溜まり、オーバーフロー)といい、空気を金型外に押し出すための通り道をエアベントといいます。

これらの設計が不十分だと、製品内に気泡が入ったり、硬い部分ができて後の仕上げに支障を来します。

5. ダイカストマシンに取り付ける

ダイカストマシンに取り付けるための金属土台があります。

これをおも型(主型、母型)といいます。
おも型には型を合わせるために、ガイドピンとガイドブッシュがついています。

ダイカストでは製品部の型は、高温の金属に触れるため、型の損傷が激しくなります。

そこで製品部の型を別で作って、おも型にはめ込むことが主流になっています。
別に作ることで部分的に交換できます。
おも型に嵌めこむ型を入子と言います。
また、複雑な形状の製品を製造する際は中子と呼ばれるものを使い、入子から製品が引き抜かれるものに先んじて取り外しが行われます。

おも型と入子
画像引用: 株式会社河村製作所様

ダイカストマシンの構造

ここまでで、金型の役割がわかったことになります。
次は金型に溶湯を流し込み、型を外すマシンであるダイカストマシンについて細かく見ていきましょう。

ダイカストマシンには、コールドチャンバー方式とホットチャンバー方式があります。
2つの違いは射出部(チャンバー)が溶湯に浸されているか浸されていないかにより呼び方が変わります。

まずは、コールドチャンバー方式のダイカストマシンを見ていきます。
コールドチャンバー方式では、溶湯を貯めている部分がダイカストマシンとは別に存在します。

例として下のダイカストマシンの図を参考に構造を確認していきましょう。

コールドチャンバー
引用: 公益社団法人 日本鋳造工学会関東支部様

溶湯は一回の射出(ショット)ごとに給湯機でプランジャースリーブ内に補給されます。

ダイカストマシンの射出時の圧力はアキュムレーターによって生み出されます。

アキュムレーター1
アキュムレーター2

引用:ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典 アキュムレータ (機械)

アキュムレーターは、蓄圧器とも呼ばれ圧力の元となる機械です。
主流の製品ではプラダと呼ばれるゴム膜が内部にあります。
ゴム膜内には窒素ガスが入っています。
射出シリンダー経由でプランジャーが引かれる際は圧力が掛かり、窒素ガスが圧縮されます。
シリンダーに引かれる圧力がなくなり、進める状態になると、窒素ガスの圧力の差の分、力が加わるためシリンダーは押されます。
結果プランジャー内の溶湯は高圧力で金型に押し出されます。

溶湯が金型に押し出された際、金型はもちろん閉じているわけですが、高圧力で溶湯が流し込まれるため、金型内にも高圧力が掛かります。
そのため、金型を閉じる圧力も高い必要があります。

高圧力で金型を閉じるため、ダイカストマシンには型締装置と呼ばれる部分があります。
型締装置の代表的なものでは、油圧シリンダーとトグル機構を組み合わせたものが使われています。

トグル1
トグル2

引用:有限会社ロイヤル工業様
この機構を使うことで、油圧シリンダーに掛ける力の20倍から30倍の力が型締力になります。
ただし、異物を金型で挟んだ際の力が大きく金型が傷つく可能性があることやスペースを取ることを回避するなどの理由から近年では、油圧でなく、ボールねじとモーターを利用したものや、組み合わせて使われるものも出てきています。

ホットチャンバー方式との比較
コールドチャンバー方式について、詳細に見ていきました。

ここでは、ホットチャンバー方式とコールドチャンバー方式の違いを確認して、それぞれの特徴を記載します。

ホットチャンバー
引用: 公益社団法人 日本鋳造工学会関東支部様

コールドチャンバー方式は、鋳造圧力を高くすることができ、大型の製品を製造しやすいところに特徴があります。

一方ホットチャンバー方式は、射出ごとに給湯する必要がないため、サイクルが早く、射出部の空気による巻き込みがないことが特徴です。
空気の巻き込みがあると製品の欠陥につながります。

ダイカストで使われる合金材料

既にダイカストでは、アルミニウム、マグネシウムを中心とした、合金が使われることは説明しました。

合金を使うことで、性質に違いが生まれ、その中でダイカストに向いているものが使われます。

ダイカストで使う金属に求められる性質は、
・金属が溶けた際の流れやすさ、金型に流したときの充填のしやすさ
・耐圧性が高いこと、割れを起こしにくいこと
・金型で冷却した際の収縮が少ないこと
・鋳造温度が低いこと
・金型への溶着、侵食が少ないこと
があげられます。

ダイカストでは溶湯が空気に触れる、高温で金型など他の素材に触れることなどから、酸化物など不純物が含まれます。

ダイカストでは金属を急冷するため、酸化物や不純物の影響は比較的でにくいと言われますが、ダイカスト用の金属の成分にはJIS規格が設けられています。

ダイカストで使われる合金のうち、アルミニウム合金の使用率が95%を超えています。

アルミニウムの特徴として、軽いことがあげられるため、軽量を重視する自動車やノートパソコンなどの電子機器の筐体として利用されることが多いです。

JIS規格で定められたアルミニウム合金の成分表と性質の例なります。

JIS番号表利点欠点CuSiMgZnFeMnNiSnPbTiAl
ADC1耐食性、鋳造性耐力≦1.011.0-13.0≦0.3≦0.5≦1.3≦0.3≦0.5≦0.1≦0.2≦0.3残部
ADC3耐衝撃性、耐食性鋳造性≦0.69.0-11.00.4-0.6≦0.5≦1.3≦0.3≦0.5≦0.1≦0.15≦0.3残部
ADC5耐食性がとてもよい 伸び、耐衝撃性鋳造性≦0.2≦0.34.0-8.5≦0.1≦1.8≦0.3≦0.1≦0.1≦0.10≦0.30残部
ADC6耐食性がとてもよい≦0.1≦1.02.5-4.0≦0.4≦0.80.4-0.6≦0.1≦0.1≦0.10≦0.30残部
ADC10鋳造性、被削性、機械的な性質に優れる2.0-4.07.5-9.5≦0.3≦1.0≦1.3≦0.5≦0.5≦0.2≦0.2≦0.30残部
ADC12鋳造性、機械的な性質に優れる1.5-3.59.6-12.0≦0.3≦1.0≦1.3≦0.5≦0.5≦0.2≦0.2≦0.30残部
ADC14耐摩耗性耐衝撃、伸び4.0-5.016.0-18.00.45-0.65≦1.5≦1.3≦0.5≦0.3≦0.2≦0.2≦0.30残部

上記の中でSi(ケイ素)、Cu(銅)を混ぜたADC12と呼ばれるものが主に使われ、アルミダイカストで生産された内、約90%以上がADC12で占められると言われています。

アルミニウム合金以外でダイカストで使われる合金は、他にマグネシウム合金銅合金亜鉛合金があげられます。
マグネシウム合金はアルミニウム合金と比較して、更に軽量ですが、反応性が高く、耐食性が悪い、溶かした時に大気と遮断する必要があります。

ダイカストで発生する不良や欠陥と原因

ダイカストで発生する不良や欠陥には、鋳造であるため発生する原因とダイカストの製法特有の理由から、発生するものがあります。

製造時に発生する不良をいくつか紹介します。

溶湯の収縮による不良

金属が冷えて液体から固体になるとき、収縮します。
収縮した際に、金属の冷え方が凝固収縮によって、収縮した分空きがでます。

また、肉厚の製品を冷却すると、中側の金属の冷却が遅いため、中側で空洞ができます。
この金属が収縮するときにできた穴を引け巣といいます。
引け巣は、部分部分の凝固と収縮により、複雑な形状になることが多くなります。

引け巣
画像引用: 小林金属株式会社様

ダイカストでは引き巣の対策として、金型にオーバーフロー部分が設けられています。
金型の項目の際で紹介した際はオーバーフロー部分は酸化物や不純物を排出する機構であると説明しました。

この部分には他の役割があり、オーバーフロー部分が最後に固まるように設計することで、収縮時に足りなくなる金属を補充し、中に金属が浸透することを補助します。

また、強度の関係で肉厚が望ましい場所には、肉厚にする代わりにリブという部分を作って強度をあげることもあります。

リブ
画像引用: 株式会社東京ダイカスト様

金属は熱の変化に伴い、力が発生して伸び縮みします。
引け巣のような空洞ができる不良以外にも力に耐え切れないことで、製品自体に割れが発生することがあります。

割れの発生の原因や発生のタイミングにより、名称が分かれています。
冷却時に起こった割れを冷間割れ、金属が凝固される間や凝固直後に起きた割れを熱間割れ(高温割れ)凝固割れ、溶湯がうまく補充できずに不規則に割れが発生する引け割れなどがあげられます。

空気やガスが残ったり、まざったりすることによる不良

空気やガスにより、製品内部に空洞ができます。

ダイカストでは、射出時に溶湯だけでなく、金型内のランナー、製品部分内の空気やダイカストマシンの射出部分の空気も混ざりやすくなっています。

一部は金型のエアーベントを通して外に排出されますが、空気が一部残ったまま凝固します。

また、空気だけでなく、離型剤や潤滑剤、金型内の隙間や亀裂に水の残りがあったりすると、溶湯を流しこんだときにガス化して、溶湯に巻き込まれます。

空気やガスの巻き込みにより、発生した穴をブローホールと言います。
ブローホールによる穴は、表面が滑らかで球状をしています。
ブローホールや引け巣など、製品内の空洞のことをまとめて鋳巣(ちゅうそう)といいます。

また、空気やガスの存在は金型内の圧力を変え、表面を荒くしやすく、部分的に欠肉を起こす未充填や、表面に不規則なしわがでる湯じわの原因になります。

空気やガスによる不良対策として、エアーベントを強化する、余分な離型剤、潤滑剤を空気で吹き飛ばす、射出部分の充填率を上げて巻き込まれる空気を減らす、などの対策が行われます。

金属のタイミングの悪い冷却による異常組織や境目の発生

仕上がった製品に異常な組織が発生することがあります。

ダイカストマシンで溶湯が溜められる射出スリーブは変形を防ぐため冷却されることがあります。

冷却された後、溶湯を流し込むと一部が凝固し、層ができます。
射出の際に破砕されて溶湯と共に流し込まれますが、こうして成型されると周囲の溶湯とうまく結合できず、強度の弱い層ができ製品としての強度も落ちることになります。
溶湯が注入されてから射出までの時間が長くても金属は冷却を始めるため、異常組織形成の原因となります。
異常組織も分類がされていて、破断チル層や粗大α-Al晶などが代表的です。

射出スリーブ冷却温度の調節を行う、スリーブの材質を熱が伝わりにくいものに変える、溶湯が注入されてからの時間を短くする、などの対策が行われます。

また、溶湯にも流れがあり、いくつか流れが合流する場所で低い温度の溶湯があると、うまく溶け合わずに湯境と呼ばれる境目ができます。

金型や金型の運用による欠陥

金型は、高熱や冷却を繰り返し行われます。
金属は熱で伸び縮みするのですが、金型内と金型表面で温度が違うためうまく変形できずに、熱応力と呼ばれる力が発生します。
ダイカストでは製造のサイクルが早いため、その分金型には強い負荷が掛かります。

こうした負荷はヒートチェックと呼ばれる細かいひび割れを起こします。

また、製造する製品が複雑な形状をしている場合、型の引き抜きの方法が変わってくるためその際に型に傷が付くこともあります。
こうした傷は見た目を悪くする他、溶湯と金型の素材がくっつく原因になり、ゆくゆくは製品寸法に違いが出たり金型部品が壊れる原因になります。
鋭角など力のかかりやすい場所が金型にあったり、急激な冷却により熱応力が強くなるなどすると金型自体が壊れます。

また、金型は複数の部品を組み合わせて作られており、寸法誤差が発生します。
高温・高圧にさらされるため金型が変形することもあります。
寸法誤差が大きくなると溶湯が隙間に流れ込み、バリ(鋳バリ)と呼ばれる出っ張りに繋がります。

バリ
画像引用: 藤本工業株式会社様

金型は都度、メンテンスが行われます。
また、熱処理により結晶構造を変えて変形に強い構造にした後、表面処理を行なって欠陥が発生しにくい金型を作ります。

ダイカストの欠陥を抑える、ダイカスト技術

これまで見てきたように、ダイカストでは鋳巣が発生します。

この鋳巣を抑えて、より高品質を目指すため様々な技術が開発されています。

セミソリッドダイカスト(半凝固ダイカスト、半溶融ダイカスト)

ダイカストでは溶融した金属を射出することで、製造を行なっていました。

セミソリッドダイカストでは、液体ではなく、液体と固体の中間のような状態の金属を用います。

金属には、液体の一部が固体になり始める温度(液相温度)と完全に固体になる温度(固相温度)があります。
この温度は圧力で変化します。
つまり、温度や圧力を調整すると固体と液体が共存するということです。

更に合金にはこの状態で、かき混ぜると粘度が下がり流動性が上がる性質(チクソトロピー現象、チキソトロピー現象)があります。
厳密には同一の現象ではありませんが、身近なものでも力を加えると流動性を上げる物体は存在します。
例えば、ケチャップやマヨネーズです。
力を加えれば加えるほど、流動性が増します。

ボールペンの液や、トイレの洗浄剤もこの性質を利用して、動いたときに液が流れるようになっています。
セミソリッドダイカストでは流動性を上げた半固体、半液体上の金属を射出することで成型を行います。
ある程度凝固しているため、完全に凝固した際の体積変化が少なく、引け巣ができにくいです。
また、粘度も液体の状態に比べてあるため、空気を巻き込み発生するブローホールもできにくいです。
低温であるため、金型の負担が少なく型の寿命や鋳バリが発生しにくくなるというところも利点です。
結晶粒も均一で、品質が向上します。

液体から半固体にする方法と、固体から半固体にする方法があり、それぞれ、レオキャスティング法(レオキャスト)、チクソキャスティング法(チクソキャスト)と呼ばれます。
レオキャスティングは、アルミニウムで複雑な形状の金型を鋳造する際には欠かせない技術となっています。
チクソキャスティングでは、マグネシウム合金でパソコンや携帯電話の筐体が多数製造されています。
チクソキャスティングは、凝固温度近くでより低い温度での鋳造であり、金型寿命の点でとても魅力的な鋳造法になっています。

真空ダイカスト・高真空ダイカスト

真空ダイカストは、金型内・射出に関わる部分の空気を真空・減圧することに空気の巻き込みを抑え、ブローホールを防ぐ鋳造方法です。
ガスの圧力が少ないため、溶湯の流れ込みもよくなります。
真空ダイカストより、より真空度を高めたダイカストが高真空ダイカストになります。
高い真空性を保つため、空気の漏れの少ない専用の金型が必要になります。
高真空ダイカストでは、金型内に離型剤等から出るガスが発生した際も抜く対策が採られていて、金型に焼き付きが発生しにくくなっています。
そのため、熱処理を施すことも可能になり、高品質な製品の製造ができます。
自動車のサスペンションやサブフレームなど、高い機械的特性が求められる部品にも使用されるようになっています。

PF法(無孔性ダイカスト法)

真空ダイカストでは、金型内・射出に関わる部分を真空にすることを目的にしていました。
PF法では空気を真空にする代わりに、活性ガス(特に酸素)で置換して射出する鋳造法です。

酸素は溶湯と反応して、酸化物となり、結果金型内・射出に関わる部分が減圧します。
PFはPore Freeの略で気孔が無いという意味で、ブローホールなどの大気やガスによる欠陥を大幅に減少させます。

局部加圧ダイカスト法

局部加圧ダイカスト法は、溶湯が金型内で凝固している最中に部分的に圧力を掛ける鋳造法です。

油圧シリンダーを用いて、厚肉部など引け巣が発生しやすい場所を直接加圧します。
溶湯の部分的な補給と圧力で引け巣の発生を抑えることができます。
比較的安価な設備で実施することができることから、広く採用されています。
二段加圧や部分加圧とも呼ばれています。

スクイズダイカスト

スクイズダイカストは、溶湯の流し込みは低速で行い、溶湯を流しこんだ後に圧力をかける鋳造法です。

低速なため空気の巻き込みが少なくなります。
また、圧力をかけることで引け巣を少なく微細な凝固組織の製品になります。
ガスの含有量が少なく、熱処理や溶接することができるため、高強度や高延性が必要とされる製品の製造に使われます。

Fabit編集部

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