事務作業に糊を塗ったりや工作に木工ボンドや瞬間接着剤を使ったことはみなさんありますよね?
接着剤は製造業でも使用されていて、重要性を増しています。
今回は、接着剤を使った加工の特徴と接着力の根源について紹介します。
接着剤を使った接合加工と他の接合加工の比較
部品や板などをつなぎ合わせることを接合と言います。
接合は、ネジやボルトなどを使用した接合、溶接やろう接など金属を溶かしてから冷やし固めることでつなぎ合わせる接合、そして接着剤を用いた接合の3つに分類することができます。
それぞれ、 機械的接合 、 冶金的接合 、 接着的接合 と名付けられています。
機械的接合
ネジやボルトなどを使用した接合は 締結力が高く、機械強度を計算しやすい です。
反面、穴を開ける加工が増え、 重量が重くなりやすい デメリットがあります。
冶金的接合
溶接やろう接では 強固な接合が瞬時に行え 、金属を流し込むため接合部の形状で接合が行えないことが比較的少なく、金属で綴じることで気密性を持たせやすい利点があります。
反面、高熱で金属を溶かすため、材質を変形させる、塗装やめっきが剥がれる恐れがあります。
接着的接合
接着剤を使用して接合を行うと、多用な材料の張り合わせが行うことができます。
また、接合と同時に材料の隙間を埋めやすいため、精度の粗さを吸収したり気密性を製品に持たせることができます。
反面、耐熱性が他の2つより低く、接着剤を塗布してから固化させるまでの時間が長いことがデメリットです。
また、 接着剤は面積当たりの強度は弱い ので、接着面積を広く取る必要があります。
接着力の鍵となる作用
接着剤を使った接合の特徴がわかったところで、なぜ接着剤を使うとくっつくか説明します。
接着剤がものをくっつけるには、次の3つの作用が複合的に作用するからと言われています。
分子間力
分子同士は近づくと互いに引き合います。
この分子同士が引き合う力を 分子間力 と言います。
画像引用: wikipedia=en Interbilayer forces in membrane fusion
通常、固体の物質同士を密着させたとしても、微視的には分子同士の距離が十分に近づかないため、接着力を生みません。
しかし、液体が介在すると話が変わります。
例えば、2枚のガラス板で水を挟むと、なかなかはがれません。
ガラス板と水の例では、固化しないため、面と水平方向の力については弱くなります。
接着剤はこの状態から中の液体が固化します。
固化することで分子間力を持ちながら固体として動きが制限されるため水平方向の力にも動かなくなります。
分子間力の根源となる力には、複数の種類があります。
ファンデルワールス力
すべての分子間に生じます。
分子上では電子が軌道上をランダムに漂っているのですが、電子が偏って存在することがあります。
ある分子での瞬間的な電子の偏りが、他の分子で起きた電子の偏りと引き合う力を生みます。
引き合って近づくとより、引力が強くなります。
このように、分子は瞬間的に発生する電子の偏りをきっかけとして引き合う力を高めて凝集します。
1個の分子では電子の偏りは瞬間的に発生しますが、至るところで電子の偏りが発生します。
固体や液体では平均的に分子間力が働くため、状態が維持できます。
画像引用: Wikipedia ファンデルワールス力
極性引力
分子中の原子同士で電子を引き付ける力のバランスにより、電子の偏りが生まれることがあります。
原子の結合具合によって、分子として電子の偏りがある場合、電気的な引き合いを生みます。
ファンデルワールス力で説明した際の電子の偏りは瞬間的に起こるものでしたが、極性引力の原因は恒常的に存在するため、より強い力となって表れます。
水素結合
水素は電子を引き寄せる力が弱い原子です。
また、小さい原子であることも特徴です。
電子を引き付ける力が強い原子(一旦Xとします。)と結合して分子を構成した場合、分子間の距離が短くなります。
また、その際水素が移動しやすいため、元は別の分子のXと容易に結合します。
分子間でネットワークができるため、極性引力の強さ以上に分子間の強い結合を生みます。
アンカー効果
接着剤は固化するまで、容易に変形します。
そのため、被着物の表面に隙間があれば入り込みます。
そこで、固化した場合、力の方向に対して引っかかりやすい場所があれば、剥がれたりずれたりしにくくなります。
画像引用: 株式会社オーシカ様
化学結合
接着剤と素材の表面で化学反応により共有結合やイオン結合を起こすと上記で説明したよりも強い結合となります。
最後に
今回は、接着接合の特徴と接着力の鍵となる作用について説明しました。
次回は、接着力を増すための接着剤の構成要素と表面処理について紹介します!